北海道を「太陽光発電音響装置」とまわる北の旅もいよいよ最終回となります。

私たちはエネルギーがなければ生きてゆくことがで きません、電気も空気も水も表現も食べ物も人も虫けらも全て生きるために必要なエネルギーです。太陽光という宇宙から降り注ぐエネルギーを吸収し、電気に 変換し、音を生成し、人や自然と融合する、「ソーラー・プロジェクト・イン・ガーデン」のツアー最終地は、彫刻家イサム・ノグチがつくったモエレ沼公園 でした。

朝から晴天という予報にもかかわらず、あいにくの曇り模様、しかも石狩平野を駆け抜ける5月の風はその季節のものとは思えないほど冷たく。今日一日の楽しみを奪い取ろうとしているかのようでした。
しばらくポプラ並木を見上げ、空を仰ぎ、朝飯を食らい、駐車場のトイレで顔を洗い、などしているうちに、空は心無しか明るくなってきました。それでも寒風はいっこうにやむ気配はなく、どうしたものかと考えはするものの、発電ができれば寒風など関係はない!来てくれる人は寒いだろうが我慢してもらおう!と腹をくくり、公園の場所取りに向かいました。

「そっちはどうだい?」
今日、一緒に踊ってもらう、友人で舞踏家のH氏からの電話でした。
やむ気配のない寒風の事は告げず
「雲も多いけど多分晴れそうだ!」と
規則正しく連なる雲を見上げて答えました。

 

session…8。しばらくは、音だけに集中していました。あいかわらずの寒風は、出てくる音をけちらし、おまえのやろうとしている事などは意味がないと言わんがばかりの圧倒的な支配力で次々に駆け抜けていきました。なんとかならないか?今日はオドリもお客さんもいるんだ…。なんとかいい音を…。グリグリと「太陽光発電音響装置」をいじるものの明らかに体力不足。勝ち目はありませんでした。もうあきらめてGANKという金属打楽器に持ち替えました。こんどは風がそのGANKについたマイクに流れ込みゴーゴーと鳴りだす始末でした。

ふと、顔をあげてオドリを見てみると、H氏は、どこでつんだか?野に咲く小さな花を手にたたずみ。一緒に踊るB子氏は、カラダを横たえ、緑の大地と呼吸をしているではないか…。かすかなる動きはオノレを自照し、カラダの隙間に寒風とともに何かを流しこんでいるかの如くでありました。

瞬間、「風だ」ということに気づきました。

風の音をボリュームをあげて、増幅していきました。「ビューーーゴーーー」。スピーカは耐えきれずハウリングをおこし、GANKも共鳴を始めました。角度を変えて風の流れを変えると音程も変化していきました。ようやく滑らかに音があたりに風とともに散らばってゆく感じがしました。

“人はこうあるべきとかこうなければならぬというのではなく、ただちっぽけな肉の身(別名糞袋)が吹きっさらしの荒涼たる大地に佇んでいるだけであり、それは徹底的に個であり孤独であり何も恐るることに足らぬ宇宙の理として在ることでしかない。”
その日の舞踏家H氏のコメント抜粋。

舞踏家はカラダを糞袋と置き換えました。
たしかにこのカラダから出てくるものといえば糞みたいなものばかりです。

神様たちは考えた…。

宇宙の真理をどこに隠しておこうか。
高い山の上、深い海の底、鬱蒼とした森…。
そんな所ではいずれ誰かが見つけてしまう…。
そうだ!生き物どものカラダの中に隠しておけば
当分は見つかりはせんだろう。

そんな話を昔、どこかで読んだような…。

この糞袋を動かしている得体のしれない“いのち”というもの。
私たちの糞袋や心というものは、この“いのち”というものに支配されています。
“いのち”も糞と一緒になって、
ほんのカケラでもいいから出てきてくれないものかなー。という
芸術家のはかない希望は捨てた方が良いのかもしれません。

今日もこのカラダから生み出されるものは、まったく糞みたいなモノばかりです。

ただ、糞は大地で分解され自然の大きな循環の中に存在しています。
そう考えれば、私たちは洗練された糞袋を目指さなくてはいけない。
おそらくそこに本来の美しさが宿っているにちがいないと思います。

カラダに入るぶんだけを略奪し
出てったぶんを補えばいい
簡単なことだ
冬を越すぶんの蓄えがあればいい
あたりまえのことだ
余ったぶんは土に還ればいい
それは美しきことに違いない

 

 

「ソーラー・プロジェクト・イン・ガーデン」は、
雨や曇りの日にはやりません。
晴れた日に晴れたぶんだけやればいい。

気狂いの譫言ということで…。では…。

追伸、我ながら拙い文章でなにが言いたいのやらなにが伝えたいのか?
書ききれないもどかしさを感じるばかりであります。
ワザと書かないことも沢山あります。でも私の心には刻まれています。あの時の言葉、あの時の表情、そして瞳。それは、こんなところにいちいち書かなくとも。忘れることはないでしょう。今回の旅で関わられたすべての皆様、そして遠くから見守っていただいている皆様、感謝の気持ちでいっぱいです。ただただアリガトウ。