ゲリラ豪雨の横浜を出て、復興の被災地を駆け抜け、海峡を渡り、自然の中での太陽光音響実験を繰り返し、クルマで約1,000km。距離を実感。遠い遠い小樽に夕刻に着きました。長い旅です。多くのセンチメンタルな気分とともに、町並みの印象は変わらず、港の倉庫脇にクルマをとめて、約束まで時間をつぶしました。

session…4。夕晩飯をご馳走になり、今回のイベントの企画やらなん やらをやってくれている若者たちに会いに彼らのホームベースの歴史的建造物リノベーションおしゃれカフェにおもむきました。真っ白の店内にお客さんが数名。早速、音を出してみようということになりクルマから機材をおろして 店内に持ち込みました。はじっこの席を陣取って太陽光発電音響装置を広げました。オオー。これがネットに出ていたヤツかー。と、まわりを囲まれ興味津々の様子。
営業中なので小さな音でデモンストレーションを開始。そして終了。そして若者T氏、おもむろにMacを立ち上げなにやらゴソゴソと機械をつなぎ実験開始。店内に流れるビートルズやなんやらのBGMが流れる中、彼が考えていたアイデアを試してみました。“コチラが出した音をその場でサンプリングしてデジタル加工をしてミックスしてゆく。”というもの!アナログからデジタルへどんどんと音が変容してゆき、その混ざり具合がとても気持ち良い。まわりの空気も読まずにひたすら音に集中、出してもらった珈琲もすっかり冷めてしまいました…、出会い頭の時間をわすれた陶酔のセッション。充分、音で話ができました…。

そして、ふっと気がつくと友人H氏は、すっかり飲みにいきたい様子。
お仕事中の彼等をおいてサッさと酒場に向かったのでした。待っていたのは顔見知りの面々、数年ぶりに合うのにそんな感じがしない不思議。当然、エネルギーや音楽や生き方の話で夜中まで、結論なんて無くていい、昨日と明日の通過点が酒場にある。そりゃスゴイ事だ…。そして長い一日をかえりみる間もなく就寝。

session…5。早朝から迷い込んだ林道の奥。高い木々に囲まれ、朝日に照らし出された新緑の森。あたり一面、綿毛が舞っていました。初冬の雪虫のようにフワフワと風にあおられ、地面に落ちることなく軽やかに舞い続けていました。そして春蝉の類いでしょうか?輪唱のように途切れることなく彼らの鳴き声を響き合わせて、森をうめつくしていました。なんという煌めき、世界は輝いているということは、このようなことを言うのでしょう。居てもたっても居られずGANK という金属打楽器をクルマから出し、林道のど真ん中にドカっと、あぐらをかいて、早速、音をだしてみました。鳥たちと同様に少し歌う声が変化するのがわかります。彼らの歌は途切れることがないのでコチラも淡々と演奏を続けていきました。楽器の向こうを大きな芋虫がゆっくりゆっくり横切っていきました。「今日のオレも気が狂っている…ザマアみろ。」と心の中で小さくつぶやきながら淡々と彼らの世界と溶け合っていく…。いく…。
だいぶ時が流れて日もづいぶんと高くなってきました。蝉たちの声が少し枯れてきました。おそらく羽の乾燥具合かなにかが関係しているのでしょう、そして、鳴き止んでいきました…。相変わらず春の雪は舞い続けていました。

session…6。さっきまでの好天が嘘のように雨が降り出して、友人H氏も少し落ち着かない感じでした。
画家のS氏とは今日が初の顔合わせ。初対面同士。緊張するのは当たり前。そして自己紹介。でも、言葉を交わしていけば少しづつ打ち解けていける、何か近い人種のオーラを感じながら、太陽光発電音響装置の準備を整えていきました。明日のイベント会場の準備に行っていた若者たちも合流してリハーサル開始。

昨晩の手応えを感じながら音を出し始めました、何も決めごとはありません、その時出てしまった音をたよりに次の音を探してゆくというもの、若者T氏の音への集中力は凄いナーと思いながら、全感覚は耳に集中し次々に新しい音を探してゆく、まわりで聴いている友人H氏や画家S氏たちも何かを発している…。やっぱり人の意識の動きは、時に鋭利な刃物のように敏感なのがよくわかります。その張り詰めた緊張感。感覚の瞳孔が広がってゆく。時が消える。ただ不思議と即興には自然な結末が待っています。
「どうでした?」
一緒にライブペイントをしてもらう画家S氏に聞いてみました。表情と言葉で認めてくれたことが伝わってきました。その後、若者T氏が用事を済ませてくるとのことでリハはお休み、友人H氏も煙草を買いに出て行き、画家のS氏と2人きりの対話の時間。いまやWEBでお互いどんな作品をつくっているかは分かっているので、その感想を手がかりに話しが弾んでいきました。制作をして生きていくことのキツさ、どうなってゆくか分からない不安感、社会との関わり、抱えている重いモノの共通点があることがよく分かりました。
友人H氏が帰ってきて、
「ところでリズムっぽい要素は今回は入れないの?」とのこと
「なんかサービスカットって感じじゃない…」とか、言いつつ、
粘土細工のようにビートをつくっていきました。最初はなにかチグハグだった音がだいぶまとまって気持ちよくなってきました。友人H氏がなにかゴソゴソ机の下からメガフォンのようなモノを取り出し、電源をつなげるとサイレンの音が!!!なんでこんなモノがここにあるんだ?(後で理由は分かりましたが…)リズムに合わせて狂乱してゆくサイレン音。画家S氏の絵の風景に合いそうな音だ。めちゃめちゃになってセッション終了。画家S氏と友人H氏と私でなんかニンマリするのでした。
そして若者T氏が用事から帰ってきて再びセッション。画家S氏から
「少し、みんなの意識の確認をしておきましょう…」との提案。
静かに自分の想いを語りだしました。無意識の扉を開くまでには、やはり言葉が重要なのです。最後に私から画家S氏への質問
「で、色に例えるとどんな色がアタマに広がってます?」
「緑色ですね。そして霧のような白に包まれている…」
画家S氏なりに北の地を踏みしめた心象風景が広がっているのが手をとるように見えた気がしました。

session…7。シェアハウスの地下室という場所は、入った瞬間何かカビくさく、手つかずの廃墟は、映画「アンダーグランド」 (1995年)を思いおこしました。

細かいあらすじは、置いておきまして、戦争ー冷戦ー戦争とユーゴスラビアの歴史をとおして、地下に逃げ込み、市民解放を目指して武器を作り続け。地上では、何か欲にまみれた者どもがごちゃごちゃに入り乱れていくストーリー。その中で坦々と開拓されていく地下組織の風景が頭によぎりました。最初は生きる?死ぬ?のギリギリの状態での生活が繰り広げられるのですが、やがては何か活気のある村のように展開してゆくのです。この場所もこの混乱期の時代にポカンっと口を開けている廃墟なのですが、やがて何かおかしなことが起きそうな可能性が感じられました。

スタッフの人たちが集まってくるにつけ地下空間の空気は少しずつ変容してゆく感じがしました、さらにお客さんが入ってきてまたまた空気がかわり、陰と陽が刻々と入り乱れているスリリングさを感じながら本番にのまれていきました。
一緒に音を出してくれたT氏「なんか音とカラダが溶け合ってゆく感覚でした…」
振り返れば画家S氏が描き上げたタブローが、この2日間の痕跡として静かにたたずんでいました…。

その映画のラストシーンです。舞台は天国あるいは彼岸のような場所。そこで、家族や仲間、女、男、子供、ブラバンが集い結婚式が楽しそうに行われています。「苦痛と悲しみと喜びなしには、子供たちにこう語りかけられない。昔、あるところに国があった。」と一人の男がコチラに語りかけてきます。ブラバンの激しい音がいつまでもけたたましく鳴り響き、人々は、めちゃくちゃに踊り狂っています。宴の場はやがて大地から切り裂かれ、小さな島となって悠々と大河に漂っていきます。それでも皆、それに気づいてか気づかぬのかお構いなしに更にハチャメチャに踊り狂っていく。というものでした。

なにか、北の地は、社会からすでに切り裂かれた場所であるという感じは、かつて自分が数年感、住んでいる頃から感じていました。日常のなかで郷土や祖国という感覚が空虚になっている今、北の地のアンダーグラウンドは、独自の漂いの中で狂乱を呼び起こしてほしいという祈りを新たに持つのでありました。

気狂いの空言ということで…。では…。